桐箱製造から始まった加茂の桐箪笥
経済産業大臣指定 伝統的工芸品のひとつである「加茂桐箪笥」。桐箪笥産地としては全国70%のシェアを誇ります。婚礼家具、最高級家具として広く知られる桐箪笥が、ここ加茂の地で製造されたのはおよそ220年以上前のこと。天然桐を豊富に入手できた土地柄、指物師が桐の特性を生かした保存用の箱を製作したのが始まりと言われています。市内を流れる加茂川から完成品を船出しできるという地の利を背景に発展し、江戸時代末期には全国的にその名が知られ、東北、北海道、朝鮮に輸出するまでに隆盛を極めました。以来、職人の伝統技術による確かな品質を維持し、他の追随を許さない日本一の産地として現在に至ります。
手塩にかけた桐材で製造するということ
材料の桐にもこだわっています。現在はかつてのように加茂産の桐を用いることは難しくなりましたが、各工房が吟味して仕入れた桐は加茂の職人の手によって原木の製材、アク抜き、天然乾燥にじっくりと3年の月日をかけます。手間暇かけ整えてきた桐のなかから最適なものを選び、注文を受けてから製造に入る受注生産が主流です。サイズ、仕上げはもちろん、金具など詳細に至るまで、一点一点お客様のご希望をお聞きしながら一級品を製造しています。
婚礼家具としての桐箪笥
皇室や政府が桐紋を多用してきたことからもわかるように、幸運をもたらす神聖な木とも言われ重用されてきた桐。そんな縁起の良い桐から作られた桐箪笥は、昭和の時代にはほとんどが婚礼家具として親から嫁ぐ娘へと贈られたものでした。娘が生まれた家庭では、庭に桐の木を植えました。成長の早い桐はちょうど成人のころに簞笥の材料になるほどに育ち、嫁入り道具に仕立てられたといいます。かつては5つ揃えといって、和箪笥、整理箪笥、洋服箪笥、夜具(布団)箪笥に座布団箪笥と豪華な嫁入り道具が誂えられました。現代の住宅事情では、これら立派な箪笥ぞろえは置き場がないことも多く、また、着物を着る機会も減ってしまったために残念ながらこの美しい風習はずいぶんと少なくなりました。しかし、現代でも祖母の代から受け継いだ年代物の桐箪笥を新しく再生して贈られる方、伝統箪笥は難しくても、せめて桐の家具を贈りたいという親心で現代デザインの桐チェストなどを選ばれる方など、親が子の幸せを想う心は現代も変わらず息づいています。
日本一の桐箪笥産地で 伝統を受け継ぐ職人たち
現在20数社が加盟する産地組合では、伝統ある加茂桐箪笥産地を未来に繋ぐべく、伝統工芸士や若手の育成にも力を入れています。後継者を育て、熟練職人の伝統技術を継承するだけでなく、若者の感性を活かした現代風の家具開発や小物を製作するなど、新しい取組を産地一丸となって積極的に行っています。私たち野本桐凾製作所は、現在3代目の野本剛(写真左)を代表に、卓越した技術を保持する伝統工芸士 野本光男(写真右)や、企画・設計に長けた若手職人 野本一貴(写真中央)を含む職人集団として、日々、伝統技術を磨きながら様々な桐製品をまごころ込めて製作しています。
加茂簞笥協同組合
新潟県加茂市幸町2-2-4 TEL:0256-52-0445
Email:tansukumiai@ginzado.ne.jp
URL: www.chuokai-niigata.or.jp